2024年ベストを月ごとに振りかえる~後編
こんにちは、arimayocoです。2024年ベスト振り返り記事、7月~12月です!
前編は以下よりご覧ください。
7月 新宿末廣亭7月下席夜の部 神田伯山「お岩誕生」
7月のベストは落語好きの友人夫妻に誘われて行った、新宿末廣亭での寄席です。「今もっともチケットが取れない講談師」神田伯山が「お岩」をやるということで、AM10:00ぴあ連打でどうにか4枚だけ確保! 夏らしく納涼会と行きましょう、と家人とともに浴衣で参戦しました。
末廣亭の前は何度も通ってるけど、中に入ったのは初めて。狭い木戸を潜るとロビーがなく、ほぼすぐ客席なのが現代のホールとは違って新鮮でした。街からひょいと客席、すぐ舞台が続いてる感じ。誘ってくれた友達が休憩のたびに「楽しめてる……!?大丈夫……!?」と心配してくれたのですが(やさしい)、落語や講談はもちろん、合間にコントや手品などの色物もあり、短時間でたくさんの芸人さんが出てくるので、4時間の長丁場でもまったく飽きることなく見ることができました。
そして迎えた大トリの神田伯山が登場した第一印象は「でっか!」。身体が大きくて顔が小さくて、なのに猫背でのそっとしていて、且つ眼光が鋭いという、羆のような存在感。後から友人に聞いたところとくべつ背が高いわけではないらしいのですが、とにかく身体が大きくて、末廣亭の小さな舞台がより小さく見える。そして声がめちゃくちゃいい。張ってないのに通る声。舞台俳優は顔より演技力より、「声」と「立ち姿」が最重要、というのが私の持論なのですが、見事な声と座り姿でした。
前週の鈴本演芸場での寄席で、客席から指笛が吹かれた炎上ネタを枕に客席をあたため、披露された「お岩誕生」は一転、こわくてこわくて。どこにでもあるささやかな日常が、ちょっとしたズレから惨劇へと変わるスリル。炊き立てほかほかつやつやの銀シャリの上の天井から血が滴り落ちてくるの、日本人の生理的直感としてまじで嫌。会場中が息をのんで最後の余韻にひたる沈黙が硬くて重くて。お見事としか言いようのない高座でした。「芸」を見た! という満足感でいっぱい! 誘ってくれた友人に感謝です。
ちなみに小屋入り中の様子は、楽屋裏/表あわせて10分くらいの密着ダイジェスト映像として、YouTubeチャンネル「神田伯山ティービー」に毎日(!)上がっています。福利厚生が過ぎないか……?
「引き受けている」人が好きなので、自分と同年代の、それも第一線で活躍する天才プレイヤーがその才能を伸ばすだけでなく、ジャンルを盛り立てるために骨を折っている姿を見ると、それだけでうれしくなります。(小説だと今村翔吾先生がこのフォルダに入っている、勝手に。)
どこまでも江戸っ子気取りのこの夜、アフターは鰻をつつきながら一献。感想戦に花が咲きました。
映画や演劇を見たあとはその空気をひきずったご飯が食べたくなるし、季節のイベントは余力のある限り楽しみたい人間なので、7月はビアガーデンにも行きました。毎年絶対一回は行くのが明治記念館のビアテラス鶺鴒。普通のビアガーデンに比べたら単価お高めなんですけど……(飲み放題なし、軽めに食べても1人10,000円くらい)。都心とは思えない綺麗に手入れされた広い庭園、周囲に高い建物がない抜けた青空が唯一無二で、ほかに浮気する気にならない。
平日は忙しくて映画もほとんど観られなかったのですが、これだけは絶対行きたい! と、妹と週末に待ち合わせて『密輸1970』へ。脚本も撮影も俳優もすばらしくて、「最近映画観てないな~~」のフラストレーションが吹き飛びました! エンタメはこうでなきゃ~~~~! 2024ベストに挙げている人も多かったですね。中年女の活躍、元気出る。
そして7月の終わりには、宇多田ヒカルの「SCIENCE FICTION TOUR」にも行きました。倍率が高そうな代々木とさいたまは諦めて福岡と仙台に応募、仙台で当選。セキスイハイムスーパーアリーナは遠征でよく行く会場なので、もう目をつぶっててもたどり着けるね(比喩です)。Hikkiは実在したよ!
どの曲もよくて踊りまくってしまったのだけど、自分でも取り立てて「この曲が好き!」とは思っていなかった「Wait&See」の、「変えられないものを受け入れる力/そして受け入れられないものを 変える力を/ちょうだいよ」のところが、何の前触れもなく心にぶっ刺さって、急にぼたぼた泣いてしまって、自分でもびっくりしました。前編でも少し書きましたが、3月から9月まで本業がマラソン状態でずーっと突っ走っている最中だったので、そのとき一番ほしかった力だったから、かも?
あと、元ネタである二ーバーの祈りって、実は映画『きみの色』にも出てくる。7月、試写でこの映画も見ていたことで、自分の中でつながる部分もあったのかもしれない、と後から思いました。
何を見てどう感じるかは、そのときどきの自分の心理状態はもちろん、前後で見たものの影響も受けつつ形成されるんだなぁと改めて実感する機会となりました。ありがとうHikki、また来てね。
7月の給料日ラジオの特集はドラマ「アンメット」。とにかく丁寧に作られた、リッチなドラマでした。出てくる俳優さんが全員はまり役で、演技の解像度が高いレベルで揃っている結果、キャラクター全員がしっかりと同じ場で生きている、奇跡のような作品です。
8月 SCRAP「哭倉村に渦巻く怨念からの脱出」
実はこの週は夏休み&結婚記念日だったので、仙台から福島まで移動し、猪苗代の沼尻高原ロッジに宿泊しました。世界で初めてエベレストに登頂した女性登山家・田部井淳子さん所縁の宿ということで、いつか絶対泊まってみたかった憧れのロッジ! これがもう……立地も館内もお部屋もお湯もご飯もぜんぶいい、レーダーチャート五角形きれいに満点! というお宿でした。
福島出身の田部井さんのホームマウンテン、安達太良山にも登りました。「智恵子抄」に出てくる「ほんとうの空」とはこのお山の上の空のことなのです……といえばピンとくる方も多いのでは? 残念ながら薄曇りの中での登山だったのですが、稜線を歩いているときに雲間から青空も少し見えました。あと視界が霞むほどのトンボ天国で、おそらく一生分のトンボを見ました……。
温泉に入れることで有名な山頂近くの「くろがね小屋」は改装休業中。新しくなったらまた登りにきたいです。ちなみに、改装前の元旦営業の様子がNHKの「ドキュメント72時間」に残っています。この番組大好き!
さて温泉とおいしいご飯でゆっくり英気を養った後は……東京に戻る家人を駅でドロップし、私だけ車で仙台に戻ります! なぜって? セキスイでもう一現場あるからです!「We're timelesz LIVE TOUR 2024 episode0」です!
まぁつまりそのなんていうか……貧乏性なんですよね。。どうせ交通費払うならまとめられる遠征はまとめたい……さらにピストンの旅よりひと筆書きの旅が好きで、登山も願わくば往復は別ルートをたどりたい、悲しき習性……。
timeleszは最初で最後の3人公演。自分の周りでは「この公演までで降りるかもしれない」という方もいたりして、泣いても笑っても3人公演。でもそんなファンの気持ちもぜんぶわかった上で抱きとめて、パフォーマンスしてるのがいまの3人だとも思える、温かくてそれが切ない公演でした。
セクゾ時代からのオタクの友達と初見の友達とをまじえての感想戦をしながら仙台のおいしいものを食べて、その内仕事の話や人生の話になって、東北旅行(後半)もよい時間になりました。あ、あと話題の「ボーイフレンド」もホテルで一気見した! 恋リアは友達とわいわい見るに限るね。
諸事情あって実家には帰省できなかったのですが、その代わりのように座・高円寺で観た、あやめ十八番「雑種 小夜の月」が、今年は自分にとってのお盆になりました。
この「雑種シリーズ」はお団子屋さんの三姉妹を主役にした舞台で、上演年とともに登場人物たちも歳を重ねていく「渡鬼」方式なのです。作・演出・主宰の堀越涼さんのことは大学時代から存じ上げていて、出演者にも知人がいるので、この20年に思いを馳せ……なんていう身内贔屓はぜんぶさっぴいても! シンプルに脚本と演出が良質なので、万人にお勧めしたいカンパニーです。
もうひとつ、マストで語りたい作品が映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を題材にした脱出ゲーム「哭倉村に渦巻く怨念からの脱出」@東京ミステリーサーカス! これは2024年ベストコンテンツのひとつです!
参加者は事件当時の哭倉村にタイムスリップし、謎を解いて囚われた鬼太郎を救うのがゴール。それを支援してくれるのが沙代ちゃんと時弥くん。実は2人は大人に隠れてひそかに文通をしていて……という内容なのですが、シナリオがよく練り込まれていて、後付けとは思えないくらい、『ゲ謎』という完成された映画のエクストラストーリーとしてよくできている! この脱出ゲームを遊ぶことで映画本編の意味が新たに書き換えられるような仕組みになっていて、二次展開でこんなことが可能なのか!? と嫉妬するほどの出来でした。完全に二次展開の域を超えている。
なんだかすごく活動的な8月ですが、夏休み中も差し込み案件でリモートで仕事が発生したりもしていて、最終週は風邪で倒れる+喉ポリープで喋るのが禁止になり、給料日ラジオはおやすみしました。さすがにキャパオーバーや……。
外出できない週末は、Kindleセールで買ったマンガを読んでました。
9月 劇団四季「ゴースト&レディ」
舞台クラスタのなかには、ダークホースでこの作品が2024ベスト入りしてきた! という方も多いのではないかとにらんでいます。劇団四季「ゴースト&レディ」! ご存知、藤田和日郎先生の英国を舞台にした中編マンガ「黒博物館シリーズ」からの舞台化です。私はこの黒博物館シリーズが大好きで! ミュージカルオタクの友達と、藤田和日郎先生オタクの友達を誘って3人で観劇してきました。