「パワーカップルなんて存在しない」は少なくとも嘘だから安心してほしい

どちらかが「一歩降り」なくても、業種によっては可能です、バランス型共働き。
arimayoco 2021.05.06
誰でも

(この記事は、2019/10/18にnoteに掲載した記事の転載です)

今朝めざめてぼんやりTLを眺めていたら、わが家が「なかったこと箱」に入っていました。

トイアンナさんのブログは以前から好きで、更新される度に拝読しています。

結婚しても、子どもが生まれても仕事は続けたい。むしろ、仕事を優先したいから子どもはいてもいなくてもいい。といっても、野心溢れるハイパーウーマンではない。出世を強く願うのではないが、マミートラックにはまって年収が落ちたり、ワクワクする前線で働けなくなるのが嫌なだけだ。

ここに書かれている言葉など、かなり私自身の仕事観に近く、今回もふむふむ……と思いながら読み進めていたのですが、記事の中盤「成功するパワーカップルは女性が降りている」のくだりで、思いっきり「ええええそうなの!?」と叫んでしまいました。

では、この世に1%ほど存在するパワーカップルは何者なのか。答えは簡単で、女性が一歩降りているのだ。そもそも、三菱総合研究所によるパワーカップルとは「夫が年収600万以上、妻が年収400万以上のカップル」を指す。つまり、パワーカップルですら対等な年収じゃなかったのだ。妻が200万円ほど年収を下げて「あなたって私より仕事ができて立派ね」といえるパワーカップルは、確かに私の周りでも婚姻を続けている。

私って一歩降りてたんだ……。し、知らなかったよ。

目次

  • そもそも年収って安定推移する……?

  • ビットバレーから東海岸に思いを馳せる

  • 結婚は生活×性癖の折り合い

そもそも年収って安定推移する……?

私の周囲(大学時代の友達夫婦とか、インターネットで知り合った友達夫婦とか、会社の同僚夫婦とか)に、ここで定義される「パワーカップル」は珍しくありません。もちろん、他人様のおうちの正確な年収など知るべくもないので、何となくの会社名とか、職種とか、暮らしぶり的にそのくらいなんじゃないかな~という、下衆な予測も含めての観測ですが。

あるいは、お互いそれなりに踏み込んだ話をする仲で、夫婦の年収差が200万円もないとわかっている人、妻の方が稼いでいると知っている人も、片手で足りないくらいいます。かといって、その夫たちが「妻に養ってもらっている」とか「1歩降りた男性」かというと、特段そんな気もしません

中には、同じ会社だけど妻の方が5歳以上年齢も社会人歴も上で、それがそのまま給与差になっているカップルもいます。このとき、夫は妻に対して「負け感」や「降りた感」があるかというと、順当に行けば5年後に自分も同等の地位にはなるわけで、気持ちとしては対等に近いのでは……。

そもそも、「学歴からキャリアのスタート地点まで全然違っていて、収入格差が固定化されている夫婦」よりも、「似たような学歴・キャリアで、今は片方の収入が高くても、今後はどうなるかわからない夫婦」の方が、パワーカップルでは圧倒的に多いのが実感です。

20代のときはより多く稼いでたベンチャー妻の収入を、年次で順調に昇給した堅い会社の夫が抜いた……とか。夫が昇進して残業代がつかなくなったので、手取りが減って上下逆転した……とか。年収の高い方が起業して給料半減とか、そもそも二人ともフリーランスだからその年ごとに変わるとか、どれも実際に耳にした話です。そういう人たちが、この記事の中ではまるっと無いことになっている……。

対等婚のパワーカップルは、「存在しない、マジで」というより、「特定の領域に偏りすぎていて、不可視になっている」というのが実情なのではないでしょうか。

ビットバレーから東海岸に思いを馳せる

世の中の仕事は「家庭にリソースを割けないほどのバリキャリ」と「パートナーを癒す余力があるほどのゆるキャリ」に二分されるでしょうか? 私が先に挙げたカップルたちも、「繁忙期もあるが基本的には休みも取れるし、毎日終電というほど苛烈な激務でもない。裁量労働やリモート勤務を上手く活用しつつ、家事や子育ても分担しながら、時にモメながらもたのしく暮らしている」人が大多数です。

これはもしかしたら、トイアンナさんの周囲に多い外資系・金融系・コンサル系などのいわゆる「丸の内」界隈と、私のいるIT・エンタメ系の渋谷新宿神保町界隈の違いなのかもしれません。

伝統的に、エンタメもITも非スーツ族でどっちかというと体育会系よりは文化系、毎日決まった時間に会社に来るのは苦手だけど専門的なスキルは持ってるよ! みたいな人たちの集まりです。ストイックに統率のとれた激務に邁進したりしま……できません

疲れたときは癒されたいけど、人に癒される前に友達誘ってテルマー湯に行ってたりするし、そもそも家でご飯を食べる回数自体少なかったりします。残業のない夜には勤怠を切ったあとも会議室でお菓子をつまみながらスマブラに興じている同僚たちから、「専業主婦(主夫)に癒されたい」という欲望を感じ取るのは難しいです。(「空気を読んで」心の内に隠しているだけかもしれませんが……)

こういうことを書いたら、「自慢?」とか「それはあなたの周りが恵まれてるだけ」と言われるかもしれない……と、思わなかったわけではありません。それでも書いておきたかったのは、自分にとっては当然ですらあった周囲の幸せそうな暮らしが、「マジで存在しない」と断定されることへの抵抗感の方が大きかったからです。

結婚は生活×性癖の折り合い

かくいう私も、「繁忙期もあるが基本的には休みも取れるし、毎日終電というほど苛烈な激務でもない。裁量労働やリモート勤務を上手く活用しつつ、家事も分担しながら、時にモメながらもたのしく暮らしている」一人です。たまに家で夕飯にできる平日は、夫が週末作った味噌汁に私が冷やご飯をぶち込んで適当に煮ただけの合作雑炊を、ネットフリックスを見ながら一緒に食べます。洗い物は食洗機がします。限りなく雑でたのしい食卓です。

「あなたって私より仕事ができて立派ね」と言ったことはありません。疲れているときは疲れている側から「ほめてええええ」とか「癒してええええ」と大声で訴えるのがわが家の約束だからです。訴えられた方は「まじで仕事できるし偉いし天才! 気遣いの鬼で企画力の塊! 誰よりもお客さんのことを考えてる! 会社は泣いて感謝するべき! 私が社長なら一億あげてる!」などと褒め讃えます。そこでぎりぎりの活力を得て、また一日頑張るのです。

難しいのは、結婚とは他人との永遠の利害調整に等しい「生活」である一方、往々にして個々人の「性癖」もセットになっていることです。「外でエグい激務に邁進してボロボロになって帰ってくる彼を癒せるのは私だけ…」というストーリーに萌える性癖だったらハイスペ激務男性と結婚するのが幸せでしょうし、「気付いたら仕事がたのしい上に出世しちゃって、男はブローとマッサージの上手さで選びたい」のなら癒し系年下わんこ男子をつかまえるのが黄金ルートかもしれません。

中には、性癖は前者なのにスキル的に後者になってしまった……という方もいるかもしれません。「生活」と「性癖」の折り合いはパートナーとも話し合いながら、やはり死ぬまで微調整し続けるしかないのだと思います。

そしてもしあなたが、「パートナーとは仕事の面でも助け合いたい」「財政上のリスク低減をしつつ、尊敬できる人と暮らしたい」「どちらかが癒す-癒される役割ではなく、互いに癒しあって頑張りたい」と思う「対等萌え」なら……大丈夫です、対等婚はあります。いろんな形で。だから夢は捨てなくていいし、パワーカップルをめざせばいい。長々と書きましたが、これが今回、一番言いたかったことです。

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