早くも2025ベスト『小説』、GQuuuuuuXの感想が悩ましい

2025年1月に観たもの・読んだもの
arimayoco 2025.03.21
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こんにちは、arimaycoです。昨年、年間ベストをまとめて書いたらあまりにも大変すぎたので、反省して今年は月単位で書きます! ということで1月の記録から。過去記事は↓からどうぞ。

例年、1月は「新しいものに出会う」よりは「去年見逃してしまった作品を回収する」月になりがちなのは私だけじゃないはず(ひとしきり盛り上がったあとに作品を追いかけるさま、「落ち穂拾い」と呼んでいます)。特に今年は2月頭に「給料日ラジオ」のリアルイベントを開催予定だったため、皆さんから寄せられた膨大な2024年ベスト作品リストを横目に「あ~これ気になってた~」と怒涛の勢いで各ジャンルの見逃し作品を追いかける年始となりました。

そのなかでよかったものを中心に紹介していきます。

いきなり今年のベスト小説出ちゃった『小説』

1月は毎年恒例「芥川賞直木賞全部読んで予想するスペース」のため、芥川直木マラソンから始まった小説パートです。感想は別記事に立てております。

あと直木賞候補作を読みつつ、同時に村山由佳『PRIZE』を読めたのもおもしろい読書体験でした。

『秘色の契り』が「全社会議で激詰め!」だとしたら、こちらは「サイン会打ち上げで激詰め!」。激詰め大衆小説、圧倒的に心臓に悪い! でも登場人物が皆圧倒的にチャーミングなのが、村山作品の心憎いところです。

そして「小説に関する小説」という流れでいきますと、野崎まど『小説』があまりにもすばらしく、早くも2025マイベスト小説が出てしまった、と思っています。1月にして!

何かの呪いで今年はたった一冊の小説しか読めないという人がいたら、私はこの本を薦めます。作品に向き合うとき、「そのメディア/ジャンルでしかなしえない達成があるかどうか」が一番気になるポイントだったりするのですが、『小説』はさながら小説による小説のための小説小説、Novel of the novel, by the novel, for the novel なんですよ! すごくないですか?(すごすぎて何を言っているのかわからないです)

本読みを自称する人間なら「わかる~~~(歓喜)」と思うところと「わかる……(沈痛)」と思うところ、両方がしっかり描かれていて、その上でとても遠くまで連れていってくれる小説。こういう小説が読みたくて小説を読んでるんだよ! 人生ずっと小説を読んでてよかった。というと小説好きのための小説みたいですが、この本から小説のおもしろさに開眼する人がいるとしたら、私はむしろその方こそがうらやましい。本を閉じたあと爆発した気持ちを逃がしきれず「ぅわぁぁぁ!!!!」と大声を出した本は久しぶりでした。

「途中から思わぬジャンルになるドラマ」大好き

ここからドラマパートです。途中から「え、そういう話だったの!?」とドライブかかる「全決」。テイストがSPECぽいとかCLAMPぽい、という感想を見かけましたが、都市を舞台にした事件や社会問題の裏に、実は怪異がひそんでいて……という筋書きとか、チームの年齢・性別がバラバラで、すてきで怪しいアジトに集まってる雰囲気とか、自分が似てるなと思ったのは「ペルソナ」シリーズ。ペルソナ好きな人は好きだと思う! 続編もきっとある……ので、今からでも追っかけ再生おすすめです。

これもまた「そういう話だったのか……」と4話くらいでドライブがかかる、Netflixオリジナル「私のトナカイちゃん」。タイトルと何となくの内容は知っていたけど、「女ストーカーがこわい」くらいの印象しかなかったので、おすすめされてなかったら見ていなかったかもしれない。つらい話なんだけど、止めることができず一気見しました。

引き続き落穂拾い気味の映画コーナー。私が2024年に逃した最大のウェーヴはパミョだったかもしれない……。あらゆる人の2024年ベスト映画の声に相応しく、おじさんがかっこよくてお姉さんがかっこよくておじさんがかわいくてイケメンがかわいい、韓国映画のキャラメイクのうまさにはいつも嫉妬しかありません。そしてこれも後半なんかちがうジャンルになる! 文句なきエンタメ! 

「一見荒唐無稽なネタを、どこまでも質実剛健に丹念に作っていく」姿勢がとってもA24な『シビル・ウォー』。現実の方がどんどん荒唐無稽の方に寄ってきていて、この記事を書いてる3月時点で、1月よりもっとずっと、「おそろしい映画だった」と感じています。

「若き才能の夢のタッグが実現!」と銘打たれた『ナミビアの砂漠』も遅ればせながら二番館にて。エネルギーの密度ときらめきがものすごくて、いい意味でたしかに「若き才能」にしか撮れない映画だ! と胸がうずうず、チクチクしました。

年始にNHK「あたらしいテレビ」に山中瑶子監督が出られていた際に、「映画を作るとき、配信で見る人のことは想定していない」というようなことを仰っていて。今の自分からすると「それって地方に住む人、2時間に2,000円払うことを躊躇する環境にある人を、切り捨てるのと同義では?」と、少しモヤっと思ってしまった部分もあったんですけど。この映画を観て、観客を巻き込んでいく大きなパワーに全身がさらわれて、もしかしたら映画を「観る」という行為のなかにも、創作に必要なエネルギーに似たある種のパワーが必要という前提で映画を撮られているクリエイターなのかな、と勝手に腑に落ちて、モヤモヤも解消されました。

勝手ついでに、「若さゆえの感性とパワーがすばらしい監督」ではなく「年齢に応じたアウトプットを高いレベルで実現することができる監督」なのでは、とも感じており、山中監督が30代・40代・50代になったときにどんな映画を撮るのかが、今からもうたのしみです。

気持ちが2010年代に飛んで感想が悩ましい『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』

そしてそして……1月と言えばもっとも語りたい映画はこれですよ、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』! 公開日から、自分より少し上の世代のアニメオタクの皆さんがスタートダッシュで熱狂していて「1日に2回観た」「週末で5回観た」なんて方も。そんなにいいの!? と思いながら、明けた月曜日に会社の後輩くんに「絶対ネタバレ踏む前に観てください!!!」と猛プッシュされたのもあり、同年代のオタク友達Mと飲み会後にすぐ観てまいりました。結果……感想が、悩ましい! もうネタバレは大丈夫と思いますが、ほんとに正直な感想を書きますので、以下有料限定で。

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