PRライティングのための5つの鉄則

知っているだけですぐ活用できる、「読みやすい文章」のための5つの法則をご紹介します。
arimayoco 2021.05.01
誰でも

(この記事は、2018/09/29にnoteに掲載した記事の転載です)

毎日毎日、仕事で文章を書いたり、人の書いた文章を直したりしています。職業柄、プレスリリースやTwitterはじめとするSNSの告知文、サービス上で表示される文言を書くことが多いです。私自身はあまり意識せず書いたり直したりしてるのですが、「読みやすい文章」には、実は明確な理由と法則があります。

先日、monokakiの定例ミーティングで「告知の文章書くときはこういう部分を意識するといいよ~」と話したら、メンバーから「知らなかった」「目から鱗」「もっと早く教えてほしかった」という反応を貰ったので、メモ代わりにnoteにも書き残しておきます。

具体例を示した方がわかりやすいと思うので、以下に「日本語として間違ってるかは微妙だけどちょっと読みにくい」ツイートを用意しました。これを敲いていきます。

10月に最新刊『主婦作家 桐生なぎのインディペンデンス・デイ』が発売予定の作家・梶原りさ先生にインタビューさせていただいた最新記事が更新されました! なぜ梶原さんはこんなにも緻密な感情描写が可能なのか、その秘密に迫ります。https://~

1. とにかく一文を短く書く

そもそも、「読みやすい文章」ってどんな文章でしょうか? それは「読み手に負担がかからない=脳みそを使わなくても意味や文脈がとりやすい文章」のことです。
広報職だと一番書く機会が多いのはプレスリリースですね。記者さんは毎日膨大な数のプレスリリースに接しているので、最初のパラグラフで端的に「あ、こういうニュースなのね」と相手に知らせる必要があります。
SNS文言の場合、基本「熱心に読む」というより「ぼんやり眺める」人のほうが多いので、「2時間残業して疲れ切った夜21時、帰りの電車に揺られながら読んでもわかる文」を心掛けています。そして、「あんまり脳みそを使わなくても意味や文脈がとりやすい文章」はまず「短い文章」です。長い文章というのは、実は読むのも書くのもテクニックが必要とされます。意外にも、文章を書きなれていない人ほど、却って長い文章を書いてしまいがちなんですね。

10月に最新刊『主婦作家 桐生なぎのインディペンデンス・デイ』が発売予定の作家・梶原りさ先生にインタビューさせていただいた最新記事が更新されました!

これは十分に「長い一文」です。文字数が多いからではなく、この中には

  • 梶原りさ著、『主婦作家 桐生なぎのインディペンデンス・デイ』という本が10月に発売される

  • ツイート主はその梶原先生にインタビューした

  • そのインタビューがいま公開された

という、時系列も主語も異なる3つの事実が一文の中に混在しているからです。できれば、一文の中の主語+述語のセットは1つまでに収めましょう。

2. 過剰に敬語を使わない

「作家・梶原りさ先生にインタビューさせていただきました!」ですが、「作家・梶原りさ先生にインタビューしました!」でOKです。

この「いただく」という表現、使い勝手がいいのでつい手癖で書いてしまいがちなのですが、文章が硬くなるし、長くなるし、実はあんまりいい面がありません。何も考えずにメールを打っていて、

「一度お打ち合わせさせていただけないでしょうか?御社までお伺いさせていただきます。ご都合の良い日をお知らせいただけますと幸いです。」

みたいな、気付いたら三連続いただく地獄になってること、ありませんか?これでも別に意味は通じるし間違いではないのですが、商業的な文章をめざすなら「文末に同じ表現が続く」のは避けたいところです。(「~だと思います。~だと思います。」なども同様ですね。)

わたしなら「一度お打ち合わせをしたく思います。御社までお伺いしますので、 ご都合のよい日時をご教示ください。」などと書き換えます。不必要な「いただく」は全部駆逐してやる! この辺りは好みもあると思うので、自分なりの表現を探してみるといいと思いますが、「させていただく」のは「相手の許可をとってするときだけ」という原則を覚えておくと、濫用を防げます。

個人的に最も気になるのは、IT系スタートアップが「新サービスをリリースさせていただきました!」と書いてしまうパターン。誰に許可とったの? Apple? まぁたしかにアプリならそもそもストアにリジェクトされたらリリースできないけど……! と、めっちゃモヤモヤします。

きっと広報はじめマーケ人員がまだ社内にいなくて、ビジネスとエンジニアさんだけで頑張っているフェーズなんだろうなぁ……と勝手に他社さんの事情を忖度したりもするんですが、もったいないです。「このサービスが世の中を超よくする!」とか「絶対喜んでくれる人がいるはず!」と信じているからこそ、リスクをとって起業して、先行投資して作った、自慢の新サービスですよね。「新サービスをリリースしました!」でいいですよ! 言い切り形で、キリッとドヤっていきましょう。

(なお、「インハウスで広報雇ったり外注でPR会社さんを頼むほどの予算はないんだけど、プレスリリースだけでもスポットでサクッとプロが書いてくれねぇかなぁ……」みたいなご相談ありましたらいつでも乗ります宣伝)

3. 能動態で書く

わたしが個人的に「させていただく」という表現が好きじゃない大きな理由のひとつに、「自分事」感・コミット感が薄いことがあります。「させていただく」のは「相手の許可をとってするときだけ」という原則に照らすと、「じゃあ誰かがやるなって言ったらやめるんですかー!」「先生が死ねって言ったら死ぬんですかー!?」と小学生ノリで思ってしまう……。

じゃあどうすると「自分事」感・コミット感が出るかというと、能動態です能動態。「最新記事が更新されました!」より「最新記事を更新しました!」の方が、表現としてすっきりしますし、責任の所在も明らかですよね。どこからともなく更新されたわけじゃなく、編集部ががんばって企画して取材して構成してチェックした記事なんですから、やはり胸を張って「更新しました!」と言いたいところです。

さらにいえば、能動態を使うと受動態より圧倒的に文章としても読みやすくなります。助動詞「れる・られる」は「受け身・可能・自発・尊敬」の4つの意味に分類される、って小学校で習ったと思います。「れる・られる」言葉は、一瞬人間の脳を「受け身・可能・自発・尊敬」のどれだろう? って混乱させます。「本日、社長の○○が会見し、弊社の新サービスが発表されました!」とか言われるともう、「されました」は受動態なの……? 自ずと発表されたの……? 社長が主語だから敬語……? と、一瞬思ってしまう。判断に脳のCPUが食われるので、「新サービスを発表しました!」の方が、読み手に対する負担が少ないです。

4. 主語と述語の関係を意識する

皆さんが「言葉の文法」というものを初めて意識したのはいつでしょう? 「今まで一度も意識したことがない!」という方もいるかもしれません。自分の場合は、受験英語で5文型を学んだときでした。S(主語)+V(動詞)、S+V+C(補語)、S+V+O(目的語)、S+V+O+O、S+V+O+Cという、あれです。

5文型でパッキリ分類できる英語と違って、日本語の文型は3文型とも4文型とも言われ、語順も比較的自由ですし、何なら主語や目的語を省略しても意味が通じます。フワっとしてる~~!

長い文章を書いていて違和感を覚えたり、ちょっとここはリズムが悪いな~と思うときは、文章を要素に分解して、「何が主語で何が述語か」という原点に立ち返って考えるといいです。(英語が得意な方は、頭の中で英訳してみると、問題点がすぐわかったりします。文の構造を知ることが目的なので、時制や単語があやふやなテキトー英文でも大丈夫です。)

なぜ梶原さんはこんなにも緻密な感情描写が可能なのか

たとえばこの一文、今は疑問文ですが、わかりやすくするために平叙文に直すと、

  • ① 梶原さん(主語)は/緻密な感情描写をすることができる(述語)

  • ② 緻密な感情描写(主語)が/梶原さんによって可能になる(述語)

という、2つの書き方がありえます。

敲き台としたツイートを見ると一見①のように読めますが、述語として「可能なのか」が残っているため、②とのハイブリッドのようになっており、微妙に気持ち悪い。これは「可能/不可能」を人に対して使うことで生じている気持ち悪さですね。

たとえば「そんなことは不可能だ」とは言っても、「あいつは不可能だ」とは言いません。「梶原さんは不可能だ」とも言いません。が、文章が疑問文になったり、「こんなにも緻密な感情描写が」という節が盛り込まれたり、その後に「その秘密に迫ります」という別の述語が入ることで、短く読めば気付ける間違いが、埋もれてしまうことがあります。

  • なぜこんなにも緻密な感情描写が可能なのか?

  • なぜ梶原さんはこんなにも緻密に感情を描写することができるのか?

あたりが正しい書き方になります。これも英文法の授業で習った無生物主語をイメージすると思考の補助線になります。違和感のある文章はとにかく要素を分解して、細かい意味ではなく文の型を見ると、その正体がつきとめやすいです。

5. 表記ルールや型を用意する

前述したように、長い文章は書く方も読む方もテクニックが要るし疲れるので、そろそろ結論にいきましょう。

10月に最新刊『主婦作家 桐生なぎのインディペンデンス・デイ』が発売予定の作家・梶原りさ先生にインタビューさせていただいた最新記事が更新されました! なぜ梶原さんはこんなにも緻密な感情描写が可能なのか、その秘密に迫ります。https://~

最初に挙げたこのツイート、わたしなら以下のように書き換えます。

【最新記事】作家・梶原りさ先生にインタビューしました! 最新刊『主婦作家 桐生なぎのインディペンデンス・デイ』は10月に発売予定。なぜ梶原さんはこんなにも緻密に感情を描写することができるのか? その秘密に迫ります。https://~

思ったより字数が減らなかった……。けれど、最初のツイートよりはぐっと読みやすくなったと思います。実際はスミ括弧【】やURLの部分は改行することが多いですが、印象を変えすぎないために一旦改行なしで書きました。

(もちろん、これが絶対の正解ではないですし、前半で書いたように細かい表現はもう「好み」の領域です。好きじゃないテイストの文章を書いていても楽しくないので、読みやすさと正確さを担保しつつ、同時に「読み手はどういう文章を心地よいと感じるのか」「自分はどういう文章を心地よいと感じるのか」追求していければ、書く仕事は何倍も楽しくなるでしょう。)

【最新記事】などとツイートの冒頭につけるときは、毎回表現を変更しないように注意が必要です。つけたりつけなかったり、字数が足りなかったら【最新】などと省略したりしてしまうと、何ツイートか続けて読んだときに違和感を覚えます。また、ツイートごとに形式が異なると、読み手が規則性を探そうと思った瞬間にやはり脳がウィーンと起動して、余計なCPUを食います。

サービス内の文言を作成する場合も、ページによってトーン&マナーが異なると同様のことがおこるので、最低限の表記ルールをWikiなどにまとめておくといいでしょう。地味な作業ですが、一回作成しておくとほかのメンバーにもすぐ共有できますし、サービスの寿命が延びれば延びるほど、ドキュメント化されたライティングの指針があると楽ちんです。

まとめ

PRライティングは、ほかのジャンルのライティングに比べて「ノウハウの共有」が重要です。「自分にしか書けない文章」を書ける人よりも、「誰にでもすぐ真似できるくらい論理的に整理された文章」を書ける人の方が、チームにとっては有難い存在です。これは趣味の創作や、署名記事のライティングとは大きく異なる点です。「好み」の話とは矛盾するようですが、逆に言えば最低限のルールさえきちんと守られていれば、多少の「キャラ変」は許容範囲、ともいえます。

  • 1. とにかく一文を短く書く

  • 2. 過剰に敬語を使わない

  • 3. 能動態で書く

  • 4. 主語と述語の関係を意識する

  • 5. 表記ルールや型を用意する

知っているだけで書けるようになる/直せるようになるノウハウはいろいろありますので、この記事がその一つとして、皆さんのライティングの一助になれば幸いです。

逆に「自分はこういう部分を気を付けてるよ!」「ここはそんなに大事じゃないんじゃない?」「全然逆のスタイルで書いてる!」などありましたら知りたいです! ぜひマシュマロやTwitterなどで教えてください。

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